EALAI東京大学 東アジア・リベラルアーツ・イニシアティブ
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「東アジア四大学フォーラム(ハノイ会議)」齋藤希史(『駒場2014』)

 「東アジア四大学フォーラム」(BESETOHA)は、日本、中国、韓国、ベトナムの東アジア4 カ国における代表的な総合大学である東京大学、北京大学、ソウル大学校、ベトナム国家大学ハノイ校が、特定のテーマや個別の機関において行っている教育・研究交流を超え、四大学としての相互交流を行うことで、東アジアにおける教育・研究の共通のプラットフォームの構築と維持を目指すために組織されたもので、1999 年以来、年1 回、4 大学の持ち回りで開催されている。フォーラムでは、個々の大学が直面するさまざまな経験と問題意識を共有しながら、それぞれの大学の組織的な交流基盤を構築するとともに、4 つの大学が連携・協力して、各国の歴史的・社会的、かつ文化的な相違を踏まえつつ、21 世紀の東アジアにおける大学教育や研究を連携して推進するための体制や具体的な方法について議論を行ってきた。
 第4 ラウンドの4 回目にあたる第16 回会議は、11 月12 日に、“The Role of Universities in Green Growth”を全体テーマとして、ベトナム国家大学ハノイ校で開催され、羽田正副学長兼国際本部長、古田元夫附属図書館長、渡辺知保教授(医学部)、加藤浩徳教授(工学部)、福士謙介教授(サステイナビリティ学連携研究機構)、およびEALAI から、齋藤希史教授、岩月純一准教授が参加した。
 11 月11 日はベトナム国家大学ハノイ校による歓迎レセプションが開かれた。12 日午前には、開会式に引き続き、4 大学の総長及び総長代理による基調講演が行われ、午後には、テーマに基づき、“Cooperation in developing training programme on green growth”、“Green technologies and opportunities for collaboration”、“Green growth model: Experiences and opportunities for collaboration”の3 つのワークショップが開かれた。
 基調講演では、各大学から“The Role of Universities in Green Growth”つまり「グリーン成長における大学の役割」において、今後果たしていく役割についての取り組みに関する総括と提言があった。さらに、BESETOHA 始まって以来全ての大会に参加されている本学の古田元夫附属図書館長がBESETOHA の歴史に関する基調講演をされた。古田教授は、まず第1 回大会から本16 回大会までのテーマを振り返り、そして16 年間の総括として次のことを述べた。
 第一に、BESETOHA が発足当初から今日までほぼ一貫して大学教育が果たす役割について強い関心を寄せてきたことに触れた。そして、「羅針盤なき航海」に耐えうるような、高度な専門性と同時に幅広い視野と未来に対する洞察力に富んだ人材をどのように養成するのかという問題意識と、世界と東アジア地域全体の公共性という視野をもった人材育成という2 つの課題意識の共有を土台として、将来、四大学に共通するような教養教育、共通の文化の構築を目指すという目的でBESETOHA が発足されたことを述べた。
 第二に、BESETOHA は東アジア4 大学の共通文化を構築しようという目標を揚げている一方で、東アジアの4 ヵ国の間にも存在する差異、文化的多様性に対する自覚をフォーラムの特徴にした。BESETOHA は公式言語を英語とせずに、日本語、中国語、韓国語、ベトナム語としたことにも触れ、これはグローバル化の時代といわれている今日の世界でこそ東アジアをはじめとする世界のそれぞれの地域がもつローカルな文化や歴史といった多様性が尊重されなければならないという共通姿勢の表れであるとした。
 第三に、「持続的発展」について触れている。持続的発展の問題は第7 回大会から取り上げられるようになり、その後、持続的発展が大きな柱として取り上げられるようになった。これは、現代世界で人類が直面している「羅針盤なき航海」の最も典型的な課題であり、あらゆる学問分野の叡智を結集することが求められているため、今日の時代に4 大学のような総合大学がその役割を発揮するべき課題であるとした。また、持続可能な発展という枠組みの中に自らを位置づけることは、あらゆる分野の学問に自己変革を求める性格をもっていることが、持続的発展のテーマが継続的に取り上げられる要因の一つになっているのではないかとした。そして、本学でサステイナビリティ学の学位を授与していることに触れ、今後サステイナビリティ学に関するアジアの大学ネットワークがさらに広がることを願っているとした。
 さらに、BESETOHA が当初の予想を超えて16 年間も継続したことの要因として、各大学の学長間に継続に関する強い意志が共有されていたことがあるとした。東アジアの地域共同体の結成は21 世紀の初頭の時期に比べると現在はその困難性が目立ち、東アジア地域の経済的な相互依存が強まった反面、政治面では各国の首脳同士の会談をもつことすら困難な状況が発生している。しかし、BESETOHA で4 大学の学長が毎年会って直接意見を交換する場をもち、お互いの信頼関係を形成してきたことは大きな意義があったと思う。また、BESETOHA という土台の上に学生間や二大学間の交流が大きく発展したことも、このフォーラムの継続がもたらした成果といってよいと思うとした。
 しかしその一方で、BESETOHA はいくつかの弱点を露呈するようになっていることも事実であるとした。まず、学長が年一回顔を合わせるだけでなく、4 大学に共通する教養教育、共通文化の創造を目標にして出発をしたが、具体的な成果を生み出すには至っていないことをあげた。また、近年では一回ごとのテーマの独立性が高く、連続性が希薄化していることも否定できないとした。このような弱点はBESETOHA がその独自の常設の事務局をもたず、経験が蓄積されにくいために生まれたのではないかとした。さらに、東京・北京・ソウル・ハノイでの会合を4 回り行ったBESETOHA は現在その岐路に達しているが、これまでの歴史と経験を踏まえることが重要であると考え、このような報告をしたと基調講演の趣旨を述べた。
 総長基調講演の後に開かれた各サブフォーラムのうち、第1 サブフォーラム“Cooperation in developing training programme on green growth”では渡辺知保教授(医学部)が “Health in Green Growth”について、第2 サブフォーラム“Green technologies and opportunities for collaboration”では、加藤浩徳教授(工学部)が “Acceptability of Green Technologies and Policies: Case from Tokyo’s Road Pricing” について、福士謙介教授(サステイナビリティ学連携研究機構)が“Research and Capacity Building for Global Sustainability: Sustainability Science and Future Earth”について報告した。
 今回のフォーラムの成果としては、4 大学間の協力が再確認されたこと、またサステイナビリティ学に関する4 カ国の研究成果と展望についての相互理解が得られたことなどが挙げられよう。
 今回のハノイ会議でも、基調講演は各国語で行われ、4 カ国語へ同時通訳される一方、各サブフォーラムでは英語のみが用いられた。今回は自然科学に傾斜するテーマだったこともあり、やむをえない面もあるが、本フォーラムが東アジア各国の歴史と文化を尊重する立場から開催されるものであることからすれば、運用言語においても、4 カ国語の使用を原則とすべきであろう。
(EALAI 執行委員会 委員長 齋藤希史)